繊細さんやうっかりさんには責任が重い看護師の仕事ってつらいですよね。
命を助けることはとてもやりがいのある仕事ですが、健康を維持することも立派なお仕事です。
向き不向きがあるので、ご自身が役に立てる職場を見つけてみてはいかがでしょうか。
看護師資格が活かせる命に関わらない仕事(具体例)
「命に関わらない」と一言で言っても、その範囲は多岐にわたります。ここでは、重症患者の対応が少なく、緊急性の低い業務が中心となる職場を具体的にご紹介します。
「人が死ぬのはいつまで経っても慣れない」「辛すぎる」場合には、人が死ぬリスクが低い科がおすすめです。
100%回避するのは難しくても、頻度を減らすだけでも気持ちが楽になるのではないでしょうか。
企業・オフィスの看護師
企業内医務室(産業看護師)
従業員の健康管理、健康診断の企画・実施、保健指導、メンタルヘルスケアなどが主な業務です。
急な体調不良者への対応はありますが、基本的に重症患者の対応はありません。
企業の規模や業種によっては、福利厚生の一環としてマッサージや健康相談などを行うこともあります。
製薬会社(治験コーディネーター/CRA、メディカルサイエンスリエゾン/MSLなど)
- 治験コーディネーター(CRC): 治験がスムーズに進むよう、被験者と医師・製薬会社の間に入って調整を行う役割です。患者さんの健康状態の把握や説明が主であり、直接的な医療行為は行いません。
- 臨床開発モニター(CRA): 治験実施施設(病院など)を訪問し、契約や法的に問題がないか、治験が計画通りに進んでいるか、被験者の経過のチェック、データが正確に収集されているかなどをモニタリングします。
- メディカルサイエンスリエゾン(MSL): 最新の医学情報を提供したり、医師からの質問に答えたりする専門職です。
特に資格は必要ありませんが、看護師としての経験があると採用されやすくなり、有利です。
健診(検診)センター
健診はいわゆる健康診断で、検診は特定の病気の発見をする検査です。
健康診断の採血、身体計測、視力・聴力検査の補助などが主な業務です。健康な方を対象としているため、急変対応の頻度は非常に低いです。

地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、公的機関で、介護保険法で定められている「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設」です。
地域の高齢者が健康で安定した生活ができるようにサポートします。
看護師は、個人のケアプランを立てたり、疾患予防の教室を開いたりします。
医療機器メーカー(フィールドナース、クリニカルスペシャリストなど)
医療機器メーカーで自社の医療機器や用具の説明をし、販売する営業です。
自社製品の導入支援や、医療機関への使用方法の説明、トラブル対応などを行います。直接患者さんに医療行為を行うことはありませんが、製品知識と医療知識が求められます。
医療機関、学会等で医師や看護師に対して製品の説明を行ったり、デモンストレーションをしたりします。
福祉・介護施設の看護師
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など
入居者様の健康管理、服薬管理、簡単な処置、機能訓練の補助などが中心です。看取りに対応する場合もありますが、急性期病院のような重症患者の対応や、緊急性の高い処置は少ない傾向にあります。急変時は医師や緊急搬送の手配が主になります。
また、介護士さんがいる施設であれば、看護師の負担は少なめです。
デイサービス、デイケア
日中の健康チェック、簡単な処置、入浴介助の補助などが主な業務です。
ご自宅での生活が中心となり、インスリン注射や服薬管理程度で、高度な医療行為を求められないため、負担が軽いです。
訪問入浴
訪問入浴は、利用者の自宅で入浴の介助をし、健康状態や皮膚の状態の確認や記録が主な仕事です。
障がい者支援施設
利用者様の健康管理、医療的ケア(経管栄養、吸引など)が主な業務です。重度な障がいをお持ちの方もいますが、容態が急変することは比較的少なく、安定した状態でのケアが中心です。
病棟の看護師
回復期リハビリステーション病棟
回復期リハビリテーション病棟はリハビリをするための施設です。
リハビリが目的なので、命に関わることが少ないです。
また、入退院が少なくゆったりと仕事ができます。

クリニックの看護師
美容クリニック
脱毛や美容整形手術の介助、術後のケア、カウンセリングなどが主な業務です。患者さんの命に関わるような緊急性の高い場面はほとんどなく、美容目的の施術が中心となります。
大きく分けて、美容外科・美容皮膚科・医療脱毛があります。

その他クリニック
クリニックや医院では、主に診療のサポートをします。
緊急性の高い患者はほぼいないため、命に関わる場面は少ないでしょう。
医療行為はクリニックによって様々ですが、一度覚えてしまえばやることは決まっているため、楽です(透析クリニックでは透析機械の使い方など専門的な知識を求められます。)。
その他
心療内科・精神科
クリニックと病棟があります。
急性期以外なら比較的落ち着いていて、看護師はほぼ採血をするだけです。
相性がありますが、職場によっては比較的楽です。

保育園・幼稚園の保健室看護師
園児の健康管理、怪我の応急処置、保健指導、感染症対策などが主な業務です。重篤な状態の園児は医療機関へ搬送されるため、保健室での対応は比較的軽度なものに限られます。
学校の保健室
養護教諭、保健室の先生です。
怪我人や急病人の対応、健康診断のサポート、配布物の作成などをします。
ツアーナース(旅行添乗看護師)
修学旅行や団体旅行に同行し、参加者の健康管理や体調不良時の応急処置を行います。
救急搬送の対応もゼロではありませんが、あくまで旅行中の健康サポートがメインであり、医療行為は限られます。
イベントナース
イベントナースとは、コンサートやライブ会場の医務室や救護室で待機し、急病人に対応する看護師です。
採血専門のクリニック・献血ルーム
採血業務に特化しており、医療行為は採血のみです。
健康な方が来院・献血するため、たまに採血で気分が悪くなる人はいますが、命に関わるような状況はほとんどありません。
看護学校教員
教えるのが仕事なので、命に関わる場面に遭遇することはありません。
ただし、看護師として5年以上の臨床経験が必要で、看護教員養成講習会の受講か、大学で教育に関する科目を履修して卒業することが必要です。後から通信制の大学で学ぶことも可能です。
刑務所看護師
その名の通り、刑務所で働く看護師です。
検疫官(看護師)
検疫官はさまざまな職種がありますが、看護師として検疫官をする場合
厚生労働省で採用をしています。詳しくは以下をチェックしてみてください。
パンフレットも見られます。
▶︎検疫官(看護師)採用情報(厚生労働省)
看護師が命に関わらない仕事をするメリット
多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。ご自身のキャリアプランやライフスタイルと照らし合わせて検討することが重要です。
精神的に余裕ができてつらくならない
緊張感が苦手、繊細で感受性が高い看護師は、精神的に余裕ができてつらくならないというメリットがあります。
「人の命を預かる」という重い責任から解放されるため、精神的なストレスが大幅に減少します。夜勤が少なく、プライベートの時間を確保しやすい職場も多いです。
仕事が楽しくなる
ストレスや疲労が蓄積され、メンタルに影響が出るレベルになると、楽しいことも楽しくなくなってしまいます。
精神的に余裕を持つことで、やりがいに感じられることや楽しいことをきちんと感じられるようになるのではないでしょうか。
毎日が楽しくなりプライベートが充実
つらくならず、仕事が楽しくなると、プライベートで病むこともなく趣味なども楽しめるようになります。
体力的にも余裕ができるため、プライベートが充実しやすいです。
残業が少ない傾向、ワークライフバランスの改善
急性期病院と比較して、緊急入院や急変による残業が少ない傾向にあります。
カレンダー通りの勤務や日勤のみの職場が多く、安定した生活リズムを送りやすいです。趣味や家族との時間を大切にしたい方には大きなメリットとなります。
スキルアップの方向転換
医療知識を活かしつつ、マネジメント能力、コミュニケーション能力、ITスキルなど、看護以外のスキルを習得できる機会が増えます。
人間関係が改善される
緊迫した医療現場特有の人間関係のストレスが少なく、比較的穏やかな環境で働けることが多いです。
自分自身も人当たりが良くなり、仕事はもちろんプライベートの人間関係も上手く行きやすくなります。
看護師が命に関わらない仕事をするデメリット
看護師が命に関わらない仕事をする場合、デメリットもあります。
給料が減る可能性がある
夜勤手当や危険手当などがなくなるため、急性期病院と比較して給与水準が下がる可能性があります。ただし、企業によっては年収が高い場合もあります。
美容看護師であれば、インセンティブがあるところもあり、命に関わらない仕事で高収入が期待できます。

仕事内容によっては飽きる
命に関わらない仕事ほど、行う業務の種類が減ります。
たとえば採血センターの場合、同じことの繰り返しで人によっては飽きてしまう可能性もあります。
ルーティンワークが苦手な人は、介護施設や訪問看護であれば、患者さんや利用者さんとの会話もあるので飽きにくいと思います。
看護スキル(医療行為)の低下
直接的な医療行為を行う機会が減るため、採血や点滴などの手技が鈍る可能性があります。
将来的に医療現場へ戻ることを検討している場合は、この点が懸念材料となることがあります。
場合によってはスキルアップが難しい
命に関わらない仕事ほど、業務の範囲が狭くなるため、スキルアップが難しくなる傾向にあります。
仕事内容によっては、新たに勉強することがたくさんあり、スキルアップできる環境もあるため、よく比較検討されるとよいでしょう。
また、急性期で再び働くのが困難になる可能性もあります(復帰した看護師もいますが、それ相応の努力が必要です)。
看護師として物足りない」と感じることも
「患者さんの命を救う」というやりがいを感じていた看護師にとっては、物足りなさや喪失感を感じる可能性もあります。
命に関わらない職場を探すポイント
理想の「命に関わらない仕事」を見つけるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
自分の「なぜ命に関わらない仕事を選びたいのか」を明確にする
「責任が重い」「残業が多い」「夜勤がつらい」など、現在の職場のどんな点に不満があるのかを具体的に言語化しましょう。それが明確になれば、どんな職場が自分にとって理想的なのかが見えてきます。
求める条件を整理する
- 給与: 最低限必要な生活費や、理想とする収入額を具体的に設定しましょう。
- 勤務形態: 日勤のみ、週休2日、残業の有無など、ワークライフバランスに関する希望を整理します。
- 業務内容: 医療行為の有無、看護以外の業務への興味など、どのような業務に携わりたいかを考えます。
- 職場の雰囲気: 落ち着いた環境が良いのか、コミュニケーションが多い方が良いのかなど、職場の雰囲気への希望も考慮しましょう。
- キャリアパス: 将来的にどのようなスキルを身につけたいのか、どのようなキャリアを築きたいのかを検討します。
実際に求人を見てみる
無料の求人サイトでは見つけにくい、看護師向けの専門求人が豊富にあります。
特に、非公開求人には条件の良いものが多く、転職サイトを通じて紹介してもらうのがおすすめです。
- 担当者に希望を伝える: 転職サイトは、あなたの希望に合った職場を探してくれます。「命に関わらない仕事」「残業が少ない」「夜勤なし」など、具体的に伝えましょう。
- 企業看護師専門の転職サービスも検討: 企業看護師の求人に特化したサービスを利用すると、より効率的に希望の職場を見つけられる可能性があります。
- 複数の転職サイト・エージェントを比較検討: 1つのサービスに絞らず、複数の転職サイトに登録し、求人の質や担当者の対応を比較することで、より良い選択ができます。
情報収集を怠らない
- 職場見学や体験入職: 実際に職場の雰囲気や業務内容を確認することは非常に重要です。可能な限り、見学や体験入職をさせてもらいましょう。
- 口コミサイトやSNS: 実際に働いている人の声は貴重な情報源となります。ただし、あくまで個人の意見であることを理解し、鵜呑みにせず参考程度に留めましょう。
- OB/OG訪問: 興味のある職種や企業に知り合いがいれば、話を聞かせてもらうのも良い方法です。
看護師としての経験をアピールする
命に関わらない仕事であっても、看護師としての経験は高く評価されます。
培ってきたコミュニケーション能力、観察力、アセスメント能力、緊急時の対応力、患者さんへの寄り添う姿勢などは、どのような職場でも活かせる強みです。
看護師としてのキャリアは、病院勤務だけではありません。
あなたの資格と経験を活かし、精神的な負担が少なく、自分らしく働ける職場は必ず見つかります。
この記事が、あなたの新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
